[対象: 上級]
Googleは、「Hummingbird(ハミングバード)」と呼ぶまったく新しい検索アルゴリズムを導入済みであることを設立15周年を祝うイベントのなかで発表しました。
Search Engine Landが公開した記事を主な情報源にして、新アルゴリズム、ハミングバードの重要ポイントをまとめます。
検索アルゴリズムの刷新
ハミングバードでは、検索アルゴリズムがまったく新しいものに生まれ変わりました。
検索アルゴリズムの“核”となる部分が根本的に置き換えられたということです。
システムの刷新ということで「Caffeine(カフェイン)」が引き合いに出されていますが、カフェインはインデックスに関係するインフラの刷新です。
インデックスのスピードと量の劇的な向上を実現させました。
しかしランキングを決定するためのアルゴリズムの刷新ではありません。
したがって検索順位に直接的な影響を与えるものではありませんでした。
一方、ハミングバードは、ランキングに直接影響する検索アルゴリズムの刷新です。
とはいえ、新たなアルゴリズムに100%完全に置き換えたということでもありません。
1つの“パーツ”のアルゴリズムとして従来のベースアルゴリズムに組み込まれながらも、すでに十分機能しているものについてはそのまま利用を続けます。
たとえばパンダアップデートやペンギンアップデートはハミングバードでも健在です。
実績のある従来の個々のアルゴリズムと、基盤となる新たなアルゴリズムのハイブリッド型とイメージしていいのかなと僕は思いました。
ハミングバードの特徴
ハミングバードの最も代表的な特徴は「Conversational Search」(会話型検索)の処理能力の向上です。
モバイル端末からの音声入力による検索に対応することが急務だとGoogleは考えているためです。
「Conversational Search」は「Natural Language」(自然言語)での検索と置き換えることもできます。
検索クエリに含まれる特定の単語ではなく、個々の単語に注意をはらい、クエリ全体つまり話し言葉や文章、そのクエリが持つ意味を理解しようとします。
たとえば以下のようなクエリで検索したとします。
What’s the closest place to buy the iPhone 5s to my home?
(iPhone 5sを買える家からいちばん近い場所はどこ?)
この場合、“place”(場所)は、文字通りの“場所”を意味するのではなく、“実店舗”を意味します。
“closest”(いちばん近い)、“my home”(自分の家)は誰にとっても同じ意味を持つわけではありません。
東京の銀座に住んでいる僕(ウソw)と北海道の札幌に住んでいる人とでは、同じ単語でも表す意味が異なってきます。
iPhone 5sが店舗で売られている電子機器であることも理解できなければなりません。
こういったコトバの背後にある“意味を理解できる”のがハミングバードです。
※鈴木注: 今までGoogleが意味をまったく理解できていなかったということではありません。Phrase-Based Indexingや共起語によって意味を理解する能力、いわゆるセマンティックの技術は高度なレベルで持ち合わせています。
ハミングバードの成果の実例
ハミングバードの導入前後で検索結果が具体的にどのように変わったかを示すのは難しいのですが、挙げられた例から1つを紹介します。
pizza hut calories per slice
(ピザハットの(ピザの)一切れのカロリー)
上のようなクエリで検索した場合、これまではこんなページを検索結果に表示していました。
一方でピザハットの公式サイトからのページを表示することはありませんでした。
しかしハミングバードのもとではピザハットからのこのページを検索結果に表示します。
ピザハットが売っているそれぞれのピザの1ピースあたりの栄養情報が表になっているページです。
検索ユーザーが何を知りたがっているのか、このピザハットのページが何について書かれているのか、その意味がわかっていないと検索結果の1位に出すことがでいないページです。
“pizza hut calories per slice”を文字列としてしか認識できていなければ、これらの単語が含まれるページばかりを集めることになります。
ハミングバードと直接の関係はありませんが、Googleの意味を理解する力をすごさを目の当たりにできる検索結果を紹介します。
これは「93ポンドは何円」という話し言葉での検索結果です。
こちらは「93ポンドは何キロ」という話し言葉での検索結果です。
ポンド (pound) は英国の通貨単位であり、重さの単位でもあります。
「円」か「キロ」かによって、Googleのクイックアンサーボックスの答えが変わっているのがわかりますね。
これは通貨と重さを表す2つの意味がポンドにはあって、「円」と「キロ」がそれぞれ通貨、重さを意味していてどちらのポンドに対応するかもわかっている証拠です。
それに模範的な検索クエリ、「93ポンド 円 換算」と検索しなくても話し言葉をわかってくれています。
このように、自然言語の検索クエリで表面上には出てこない検索ユーザーの意図およびクエリの意味を理解する能力を、ウェブページを対象にしてランキングを決定する検索アルゴリズムに適用したのがハミングバードです。
ちなみに例で見せた検索結果の1位には、検索クエリの回答に見合ったページが表示されています。
これはともすればハミングバードの成果かもしれません。
ハミングバードの実施時期と影響、日本への導入
ハミングバードは約1ヶ月前に実施済みです。
つまり本番環境でハミングバードはすでに稼働しています。
Forbsによれば、世界中で90%の検索に影響するとのことです。
It affects 90% of searches worldwide.
“worldwide”とあるので日本にも導入されていると考えてよさそうです。
影響は90%といいますが、どの程度においてかが不明です。
初代パンダアップデートは、googoe.comで11.8%のクエリに影響するとGoogleは発表し、すさまじい変動を起こしました。
この時の変動はユーザーが気付く程度、たとえば上位5位のうちどれかが入れ替わったような程度です。
しかし、1ヶ月前前後に大騒ぎになるような順位の大変動は起こっていません。
会話型、自然言語でのクエリにハミングバードは主に関係するので、長い複雑なクエリのほうが影響を受けやすいようです。
対して、1語や2語の単純なキーワードに与える影響は少なそうです。
なので変化に気付くチャンスが少なくなっていたのでしょう。
ハミングバードが与えた実際の影響は、常に検索結果の状況を詳細に監視している人が「言われてみればあの変動がハミングバードの影響かもしれない」と思い当たるフシがあるくらいと思われます。
ハミングバード対策
ハミングバードにどのように対応すべきかを心配する人もきっといることでしょう。
でも何か特別なことをする必要はまったくありません。
今までと同じようにユーザーに焦点を当てて良いコンテンツを作っていくことが第一です。
ハミングバードの導入によって、意味を理解する力をGoogleがますます向上させたのですからなおさらコンテンツが重要になってきます。
僕はSEOに専門的に携わっているので、こうしてハミングバードのことを研究します。
でもあなたが一般のウェブ担当者なら、この記事を読み終わったあとは、「ふーん、そういう新しいアルゴリズムが導入されたのね。さて普段の仕事に戻ろう。」で全然OKです。
きちんとしたSEOに取り組んでいるなら、これまでの施策に何ら変更を迫るものではありません。
Hummingbirdの名前の由来
Hummingbirdの名前は、“precise and fast”(正確で速い)がもとになっています。
ハミングバードは日本語では「ハチドリ」です。
キーワード分析が不要になる?
最後は僕の“妄想”で締めます。
ハミングバードやナレッジグラフによって、従来のようにキーワード、つまり文字列ではなく、モノゴトの存在やコトバの背後にある意味を理解する技術をGoogleは着実に実現しつつあります。
これがもっと進めば、特定のキーワードをターゲットにするSEOは時代遅れになってしまうのではないでしょうか?
キーワードが存在しなくてもユーザーの求めることを提供できればいいわけですよね。
キーワードにこだわらずにSEOができるのなら、(not provided)が100%になっても怖くありません。
ビッグキーワードだろうがロングテールキーワードだろうが、狙ったキーワードでの上位表示に固執するSEOから脱却する準備を進めていったほうがいいのかもしれませんね。