[対象: 上級]
Googleは数々の特許を申請・取得しています。
SEOに取り組む僕たちはこれらの特許を意識しておくべきでしょうか?
終わりにしてほしいとマット・カッツが思う最近のSEOの誤解
終わりにしてほしいと思う最近のSEOの誤解は何ですか?
という質問に対してGoogleのMatt Cutts(Matt Cutts)氏はこのように回答しました。
Googleが何らかの特許を取得したからといって必ずしもその特許に書かれている仕組みを今利用しているとは限らないことだ。
これはそのとおりですね。
「取得 = 実装」とはなりません。
そのメカニズムを特許として取得したにすぎないからです。
実際の検索アルゴリズムに組み込むかどうかはまた別問題です。
他人に取られないように単なるアイディアとして申請することもあるだろうし、実装したくても現時点では技術的に不可能なものもあるでしょう。
マット・カッツが否定した特許に関連する都市伝説SEO
Matt Cutts氏は、Googleが取得した特許に関わる2つの誤解を例に挙げました。
1. ドメイン名を長期契約がしたほうが有利
「ドメイン名の契約期間は長いほうが評価が高くなる」というSEO都市伝説があります(ここでいう「契約期間」は、それまで継続してきた運用歴ではなくて、1年契約とか3年契約とか未来に向かってのドメイン名の保持期間のこと)。
ドメイン名登録事業者が長期契約を促すために利用することがありますがこれは誤りです。
長期契約自体は悪いことではないにしてもSEOに有利だという不正確なセールストークに釣られないようにしてください。
ドメイン名の契約期間とランキングには関係がないことをマット・カッツ氏は過去にも否定しています。
2. SEOをやっている人の反応を観察して検索順位を変化させる
Matt Cutts氏が否定したもう1つの都市伝説は、想定外の順位変動を一時的にサイト管理者に見せることによってスパム行為かどうかを判断するという特許です。
かなり興味深いスパム検出の仕組みなのですが、使っていない特許の例としてビデオのなかでMatt Cutts氏は言及しています。
Googleが取得した特許を知っても無意味なのか
では、特許を必ずしも実装しているとは限らないのであれば、Googleが取得・申請した特許の中身を知ることに意味は無いのでしょうか。
マット・カッツ氏とビル・スロースキ氏のやりとり
Googleの特許研究の第一人者としてSEOの世界では名高い、SEO by The SeaのBill Slawski(ビル・スロースキ)氏がMatt Cutts氏とTwitterで下のようにやりとりしていました。
@mattcutts Let’s not create a new misconception that reading patents from Google has no value though. :) They are a great learning tool.
— Bill Slawskiさん (@bill_slawski) 2013年5月3日
@mattcutts グーグルの特許を読むことに価値はないという新たな都市伝説を作らないでほしい。特許はとても優れた教材だ。
@bill_slawski nothing wrong with enjoying a good patent or two, but I just didn’t want SEOs to jump to conclusions.
— Matt Cuttsさん (@mattcutts) 2013年5月3日
@bill_slawski いい特許を1つ2つしっかり読むのは何も悪いことじゃない。SEOをやっている人たちに単純に結論に飛びついてほしくないだけだ。
@bill_slawski good point. My main worry was SEOs assuming that we were changing ranking to observe SEOs’ actions.
— Matt Cuttsさん (@mattcutts) 2013年5月3日
@bill_slawski 僕が気になっているのは、SEOをやっている人たちの行動を観察するために僕たちがランキングを変化させているとみんなが思い込んでしまうことだ。
ビル・スロースキ氏の見解
このやり取りを見ていて、Googleの“深い”特許研究を持ち味にしているビル・スロースキ氏がマット・カッツ氏の発言をどう考えているのか気になったので直接聞いてみました。
2つめの意図的な一時ランキング調整に関しては、これに該当するような事例を2、3件知っているし、もし自分がGoogleだったら実装を検討するだろうと言っていました。
ただし無条件に適用するのではなく、無駄なコンピュータパワーを使わないためにしきい値を設けて条件に合致したものに適用するだろうとも言っていました。
検索ボリュームが多いキーワードや商業的(儲かる系)のキーワードだけを対象にしたり、検索結果ページの1ページ目だけを範囲にするなどです。
1つめのドメイン名の契約期間に関する特許は、Information Retrieval based upon Historic DataといってMatt Cutts氏も発明者に名を連ねている有名な特許です。
ビル・スロースキ氏のブログ記事を参照して僕のブログでも、何回かにわたって、以前に内容を説明したことがあります。
ドメイン名の長期契約がランキングに影響しないとしても、この特許にはすでに実装されているに違いない仕組みが多くあるし学べることがたくさんあります。
Googleの特許を学ぼう
テーマがあちこち飛びましたが、ここがこの記事で僕がいちばん伝えたいことです。
Googleが出願・取得した特許を学びましょう。
ビル・スロースキ氏は僕からの問いかけに対して次のように締めくくりました。
I find patents as a way to come up with questions about how Google and other search engines work, how they might apply algorithms that might require certain thresholds and/or levels of confidence in something, or how something that they describe might be a starting point to a completely different approach. Google does a lot of experimentation and testing when they make the changes they do.
Googleや他の検索エンジンがどのように動くのか、一定のしきい値や何らかの確信度を必要とするアルゴリズムをどのようにして適用するのか、説明していることが完全に違ったものの出発点にどんなふうになるかについての疑問に対する答を見つけ出す手段として私は特許をみなしている。Googleは、変更を加えるときたくさんの実験やテストをやっている。
ようは、Googleが目指している検索の世界やその検索の世界を実現する検索アルゴリズムを理解するうえでGoogleの特許を知ることは役立つということです。
それが実装されているかどうかは2次的な問題です。
たとえば共起語は、この辺りの特許に関係したことが書かれています。
今実装されていなくても時間がたって実装されている仕組みはたくさんあります(個人的には、AuthorRankはまだ実装されていないと思ってますが実装される日を楽しみにしてる)。
「Googleの特許を読みましょう」は、Matt Cutts氏の同じビデオを解説した記事で渡辺隆広さんも勧めています。
Googleは、検索ユーザーが最高の体験をできる検索世界を作ろうとしています。
Googleが理想とする検索世界を知っておくことはひいては検索ユーザーのためのサイト作りにも繋がりますよね。