[対象: 全員]
SMX Advanced Seattle 2012からのレポート記事になります。
第一弾は“You&A With Matt Cutts”というタイトルのキーノートです。
“You&A”は“Q&A”をもじったもので、Googleのウェブスパムグループのリーダー、Matt Cutts(Matt Cutts)氏がさまざまな質問にこのキーノートでは答えてくれます。
モデレータはSearch Engine Landの編集長、Danny Sullivan(ダニー・サリヴァン)氏です。
ここでしか聞くことのできない貴重な情報がたくさんあります。
やや長めですがじっくり読んでください。
“You&A With Matt Cutts” キーノート
ペンギン・アップデートはペナルティなのか?
違う。アルゴリズムの校正 (calibration)。パンダは質の低いコンテンツに対抗するために作られた。しかし質の高いコンテンツとスパムの間に存在するものが残っていて、それに対抗するために設計されたのがペンギン。パンダと同様でホワイトリスト(例外)は存在しない。
「ペナルティ」という言葉をGoogleは社内ではもう使っていない。「手動対応(Manual Action)」と呼んでいる。手動対応は、ウェブスパムチーム(の人間)によって実行される。(人間の手が介在しないものを)「アルゴリズム的 (algorithmic)と呼んでいる。ペンギンは200以上あるアルゴリズムの1つ。
すべてのアルゴリズム変更を教えることはないが手動対応が取られた時はGoogleウェブマスターツールで通知している。99%は通知している。したがってGoogleウェブマスターツールには登録しておくべき。
ペンギン・アップデートの新たな更新は実行していない。パンダもペンギンもだいたい1ヶ月ごとに更新してきた。
※鈴木補足: この時点では4/25の1回だけ。
WPMUがペンギンから回復したのは問題箇所をきれいにした後データ更新で回復できた良い例になる。
※鈴木補足: WPMU.orgというWordPresstの情報を発信したりテンプレートを配布したりするサイトがあります。ペンギン・アップデートで大きなダメージを受けました。問題となっていると思われるリンク(無料配布するテンプレートのフッターに差し込まれたリンクや運営する無料ブログのフッターに差し込まれているリンク)を削除するなどしたところ1度目の更新でリカバリに成功しました。SEOmozで詳細が読めます。
ペンギンは手動対応ではないから再審査リクエストは役に立たない。
(リンクを集めるための)ブログネットワークはもはや通用しない。
ネガティブSEOについて
絶対にあり得ないことではない。ヘルプの文言を変更した。
※鈴木補足: ヘルプドキュメントの説明が「ほぼ不可能です」から「対策に取り組んでいます」に変わっています。
リンクを削除する手段が欲しいと多くの人からのリクエストがある。今後2、3ヶ月後にリンクを無効化する機能を提供することを検討している。
サイトワイドリンク(ROSリンク)を単に無視しないのは、それでもリンクを売り続ける人がいるからで、売った結果がどうなるかを分からせることで阻止するため。スパム的なリンクの企てはお金と時間の無駄。
※鈴木補足: 不正なリンクを無視するのではなくペナルティを与えるということです。
不自然リンクの警告は手動対応によるものか?
そのとおり。アルゴリズム的な対応は通知を送らない。700,000通送った警告メッセージは不自然リンク警告だと多くの人に思われているが、不自然リンク警告はそのうちの1桁台の%でしかない。大部分は明らかなブラックハットに対して送ったもの。
※鈴木補足: この発言に対して後からGoogle+でMatt Cutts氏による補足がありました。
今年(2012年)の1月、2月に700,000通の警告メッセージを送ったことを公表している。不自然リンクに対する警告はそのうちのわずか3%前後で25,000程度。600,000以上はゴミのようなコンテンツの自動生成やクローキングのようなひどいブラックハットテクニックに対して送ったもの。数が増えたのは不自然リンクではなくもっと悪質なブラックハットに対して与えたペナルティを通知して透明化を図ったため。
有料リンクについて
ツールを常に改良し続けている。たとえばブログネットワークを見つけ出すツール。
リンクを買うときに自分は非常に慎重にやって形跡を残さないようにしたつもりでも相手はそうではない。(だから見つかる。)
Googleは有料リンク対策をもっともっと強化している。我々が新しいツールを開発していることを人々は知らない。リンクを買うことがますますリスキーになっていることを認識しなければならない。
SEO会社に聞いてみれば、5~7年前に比べるとSEOが難しくなり続けていることが分かるだろう。短期では効果があっても長期では効果がない手法があることをペンギンは物語っている。2004年当時はスパムの対応に満足していなかったが今はずっと満足できている。
SEOの評判が悪い理由の一部は、良くないことだと知りつつリンクを売る人がいるから。
アフィリエイトリンクにはnofollowを付けたほうがいいか?
ほとんどのアフィリエイトをGoogleは把握している。心配ならnofollowを付けて構わない。
リンクは今でも効果的なのか?ソーシャルにとって代われれたのではないか?
ウェブは非常に広大で拡大を続けている。
すべてがソーシャルに向かいリンクがもう使われていないという意見があるがそうは思わない。リンクの追悼文をまだ書く時ではない。
SEOとの戦いはどうなった?
※鈴木補足: ダニーのジョークで会場が笑いました。
戦っているのはSEOではなくスパム。
我々が言っていることは7年前から何も変わっていない。人を惹きつけるコンテンツを作ること。サイトにまた訪問したいと思わせること。
どうやってリンクを自然に見せようとか、どうやってすばらしいと思わせようとか、本物らしくごまかすのではなく本物にならなければならない。
我々がやろうとしていることは条件を平等にして競ってもらうこと。昔から首尾一貫している。
Googleは検索結果への直帰率を見ているのか?
ウェブスパムチームはGoogleアナリティクスを使っていない。ランキングにもGoogleアナリティクスのデータを使っていない。
直帰率はノイズが入りやすい。たとえば「日没」を検索して、そのページで日没時間を見てすぐに戻ってくることはごく自然。我々が目指しているのはユーザーが素早く答えを見つけられるようにすること。
人々が直帰率をGoogleが使っていると疑うのは理解できるし止めはしないが、直帰率の利用には落とし穴があることを我々は分かっている。
何%の検索が現在SSLになっているのか?
初めは米国だけに導入して影響するのは10%未満だった。今でもそう変わらないだろう。
※鈴木補足: そんなことないですよね。僕のブログは半分近くが(not provided)です。
Firefoxもセキュアな方向に向いSSL検索を使うことに決めている。
※鈴木補足: Web担でピックアップしました。
Googleはいろいろなものをインデックスするようになっている(ので安全性、プライバシー保護を高めたい)。ISPや政府が通信を見ている国もある。
マーケッターにとっては不利だとは分かっているけれどユーザーのことを第一に考えたい。
Googleウェブマスターツールを検索クエリレポートを見れば過去90日にさかのぼって2,000個までのキーワードを知ることができる。98%のサイトはこれでカバーできる。
※以前に解説しました。
サイトのブロック機能が消えたり出たりするのはなぜ?
Chromeにブロックの拡張機能がある。ブロックのデータはパンダ・アップデートに使わている。
※鈴木補足: バグとか言っていたような気もしますがあやふやです。
たくたんのWordPressサイトが“Powerd by WordPress”のリンクをフッターに設置しているのにペンギンでペナルティを受けないのはなぜ?
多くのWPブログはハイクオリティだがWPMUにリンクしているブログは質の低いものが多かった。
AdWordsがSSL検索でもキーワードを見ることができるのはなぜ?
見えなくしてしまうと、どの広告主も完全一致でキーワードを登録してしまいデータベースが大きくなりすぎてしまうから。
不自然リンクの警告を受けたら再審査リクエストを送らなければならないのか?
そのとおり。これは手動対応。
リッチスニペットスパムに対処しないのか?
ハッキングされたサイトがリッチスニペットを乱用していることがある。ランキングを下げられるかもしれないし、リッチスニペットを消されるかもしれない。
不自然リンクを削除できない場合はどうしたらいいか?
通常は、ランダムに抽出したサンプルのリンクを見て削除ができているかを判断している。どれも削除できていなければペナルティは解除しない。
リンクを削除するためにどんな努力をしたかを知りたい。70%よりも80%削除したほうがいいし、90%削除すればさらにいい状態。
すべてを削除できないことは分かっている。Googleウェブマスターツールのチームと相談してリンクを無効化する機能を提供することを検討中。ただしまだ先の話。
不自然リンクを取り除けないときはそのページを削除したほうがいいか?
そのページが重要でないならそうしてもいい。その努力はドキュメントに残したほうがいい。
※鈴木補足: 再審査リクエストに書くということでしょうね。
何%くらいスパムレポートに対して行動を起こしているか?
自分たちでも対応すべきスパムのリストを持っている。これまでリンクネットワークや有料リンクなど、何万ともすれば何十万というサイトを削除してきた。
検索に与えるインパクトに応じてスパムレポート(で報告のあったスパム)と自分たちが持っているリストのバランスを取って対応しなければならない。4つの要素をかけてインパクトを測っている。
Google+とSEO
+1のデータはクオリティを測るシグナルとしてはまだベストとは言えない。Google+のデータがどのくらい価値があるかを判断するにはまだ日が浅い。Google+は可能性を秘めている。
※鈴木補足: +1のデータは今のところ使っていなさそうです。
ペンギンの名前の由来
パンダのときはエンジニアの名前をとって付けられた。名前を付けてほしいとあるエンジニア頼んだ。ふわふわしてかわいいのがいいと言ったのだが選んだのはペンギンだった。パンダのあとで白と黒。
パンダやペンギンにやられたらゼロからスタートしたほうがいいいのか?
ときにはゼロからスタートしたほうがいいこともあるだろう。
ともにアルゴリズムだからリカバリできることもありえる。人々が好きなコンテンツを作っていれば元に戻れるだろう。WPMUがそうだった。
スパムをやってきたなら元に戻ることを期待してはいけない。
以上です。
実際にはもう少しあるのですが僕たちにはさほど関係しないトピックだったので省略します。
ペンギンもパンダもペナルティではなくランキングを決めるアルゴリズムの1つだということがあらためてクリアになりました。
そもそもGoogleは現在は「ペナルティ」という用語を使っていないそうです。
人手動対応を意味する“Manual Action(マニュアル・アクション)”と呼んでいるのことでした。
対してアルゴリズムで自動化されたものは“Algorithmic(アルゴリズミック)”と呼んでいます。
順位が下がるという点ではどちらも大差ありませんが、アルゴリズム的な要因によるものに対しては再審査リクエストは無意味ですね。
かたや不自然リンク警告は手動対応です。
解除してもらうには再審査リクエストが必須になります。
リンクを無効化する機能をウェブマスターツールで提供することを検討中という発言は衝撃的でした。
今すぐの話ではないとしても僕たちが待ち望んでいた機能になります。
検索結果への直帰率をランキングのシグナルには組み込んでいないとはっきりと言ったのは初めてのはずです。
当然見てはいるでしょうが、それをそのまま検索順位には直接反映させていないのでしょう。
他にも有料リンクをはじめとするウェブスパム対策への断固とした姿勢が伺えました。
この記事でレポートした“You&A With Matt Cutts”に参加するだけでもSMX Advancedに参加する価値が十分あると言い切れくらい僕にとっては貴重な情報がたくさんありました。
あなたにとって最もインパクトのあったMatt Cutts氏の発言はどれだったでしょうか?
【You&A With Matt Cutts 番外編】
最後まで読んだあなたに特別ボーナスです。
Matt Cutts氏が登場する前に下のビデオが会場のスクリーンで再生されました。
Googleで1位を獲得するための方法をMatt Cutts氏が語っています。
内緒にしておきたいのでごく一部だけを紹介します。
- まず重要なのはキーワード出現度。理想的なキーワード出現率は77%。
- できるだけたくさん同じキーワードを繰り返す
- ポルノサイトにリンクすればユーザーの役に立つ。
- ユーザーをいらつかせるのは絶対にいいこと。
- Adsenseを貼れば順位が上がる。
僕はもう見たことのあるビデオでしたが、会場はもちろん爆笑の渦。
ぜひ全体を通して見てみてください。
いままででNo.1のウェブマスター向けQ&Aビデオです!w