[対象: 中〜上級]
Northeastern Universityの研究者が中心となって、Googleのパーソナライズ検索に関する調査を行いました。
その結果を公開しています。
僕はまだざっと流し読みしただけですが、重要なポイントをJustin Briggs氏がピックアップしているので、それに倣って興味深い部分を説明します。
Googleウェブ検索におけるパーソナライズ検索の計測
1. キャリーオーバー効果の継続時間
パーソナライズ検索では、直前のクエリに影響されて検索結果が変化することがあります。
調査では、この動きを「Carry-Over Effect」(キャリーオーバー効果)と呼んでいます。
下のキャプチャは、「hawaii」(ハワイ)を検索した直後に、「urban outfitters」(アパレル小売店のショップ名)を検索した結果です。
2位には、「Is there an urban outfitters in Hawaii?」(ハワイにアウトフィッターズはありますか?)というYahoo! Answers(日本のYahoo!知恵袋に相当)のQ&Aが入り込んでいます。
クエリには含まれていないハワイに関係したページです。
直前に検索した「hawaii」の影響を受けていると考えられます。
調査はボストンで行なっていたため、1位にはUrban Outfittersのボストン店舗の所在地が表示され、3位にはYelp(ローカルディレクトリ)のUrban Outfittersのボストン店のページが表示されています。
【鈴木補足】これはパーソナライズ検索ではなく、検索する場所に影響されるローカライズですね(Googleでは「コンテキスト」と表現しているかもしれません)。
キャリーオーバー効果はずっと続くものではなく一時的なものです。
調査では、キャリーオーバー効果が継続する時間は10分間と判明しました。
10分を超えると、キャリーオーバー効果は消滅します。
【鈴木補足】いろいろキーワードを変えて試したのですが、僕はキャリーオーバー効果を再現できませんでした。
2. パーソナライズ検索の順位分布
パーソナライズ検索で順位が変化しやすいのは、下の方です。
上位の結果は変化しにくいようです。
3. パーソナライズ検索が影響しやすいクエリ・影響しにくいクエリ
パーソナライズ検索の影響を受けやすいクエリは、会社名や政治に関係するクエリでした。
たとえば、「greece」(ギリシャ)や 「humanrights」(人権)、「home depot」(ホーム・デポ)です。
会社名は、お店と同じように、ローカライズが働いたせいと思われます。
【鈴木補足】先程も言ったように、検索者がいる場所による検索結果の調整、つまり「ローカライズ/コンテキスト」は、厳密にはパーソナライズではありません。誰が検索してもその場所にいる限りは影響を受けます。パーソナライズ検索を無効にした状態でさえ、影響を受けるでしょう。
一方で、「What is…?」(〜とは)のような事実を確かめるクエリや健康に関するクエリはパーソナライズ検索の影響を比較的受けにくい傾向にありました。
4. 検索順位の変化
パーソナライズ検索による検索順位の変化を調べたところ、以下のような結果が出ました。
- パーソナライズ検索によって1位になった結果の73%は、もともとは2位だった。
- もともと1位だった結果の58%は、2位になった。
- パーソナライズ検索で1位になった結果の93%は、もともと検索結果ページの1ページ目に表示されていた。
- もともと1位だった結果の82%は、パーソナライズ検索が働いた後も検索結果ページの1ページ目に残っていた。
【鈴木補足】パーソナライズによって、ひっくり返るほど、ガラリと大きくランキングが入れ替わるというわけではなさそうですね。
僕は、PCのメインブラウザで使っているChromeのアドレスバーから検索する際は、パーソナライズ検索をOFFにする「&pws=0」を常に付けて検索する設定にしています(厳密にやりたい時はシークレットモード)。
ですが、アカウント設定ではウェブ履歴を有効にしたままです。
パーソナライズ検索の影響を調べたいときがあるので、完全には無効化しません。
なので、スマホから検索する場合はパーソナライズ検索がきっちり働いています。
Android端末の普及が進んでいるため、パーソナライズ検索が検索結果に与える範囲・影響は今後も大きくなり続けるだろうと僕は思います。
あなたは、この記事で紹介した調査結果を見て何を感じたでしょうか?