GoogleのAIモードは検索トラフィックを増やすのか盗むのか?

[レベル: 上級モード]

オプトインユーザーを対象に試験が始まった Google 検索の AI Mode は AI が回答を生成します。
従来の検索とは異なり、検索結果をリスト形式で提供しません。
いわゆる「10 本の青いリンク」の検索結果ではありません。

ユーザーが求めていた情報が AI Mode の回答で手に入れば、ウェブサイトへの検索トラフィックの減少が懸念されます。
コンテンツ発行者のこうした懸念に Google はどのように対応するつもりなのでしょうか?

クリックしやすい UI でトラフィックを送る

Google 検索部門の副社長である Robby Stein(ロビー・スタイン)氏が次のように質問されました。

ウェブパブリッシャーからのコンテンツを(AI モードが)すべてスクレイピングし、ユーザーがサイトをクリックするインセンティブを奪っているのではないかという正当な懸念をどのように鎮めますか?

スタイン氏はこう説明します。

チームは、サイトへのクリックをいかに容易にするかに重点を置いています。発表記事で示したように、多くの UI アップデートを今後予定しています。これは、ユーザーが求めていると私たちが聞いていることであり、AI モードの構築における核心部分です。また、AI モードは新しいタイプの質問に答え、さまざまな側面を探求するためのフォローアップを可能にし、最終的にはサイトがランク付けされるための新しい機会を生み出します。

AI Mode からのトラフィックが発生するようなユーザーインターフェイスに工夫しているとのことです。
また、フォローアップ質問を可能にすることで、より多くの関連のコンテンツが引用されるようにもしているそうです。

AI モード回答の中の外部サイトへのリンク

スタイン氏が言うように、AI モードの回答には外部サイトへのリンクが多く含まれます。

通常、回答の各段落には関連ウェブコンテンツへのリンクがアイコンで示されます。
また、右にはカードでも示されます(PC 検索の場合。モバイル検索ではカルーセル)。

AIモードからの外部リンク AIモードからの外部リンク

キャプチャでは回答のすべてが写っておらず、この下にもさらに回答が続きます。
したがって、関連コンテンツへの外部リンクももっと出現します。

追加質問すれば外部リンクはさらに増えます。

この UI がベストかと問われれば改良の余地はあるようにも思いますが、少なくとも外部サイトへトラフィックを送る仕組みは提供されています。
初期の AI Overview(その前身の SGE)では、外部リンクがなかったことで無断引用だと非難されました。
AI Mode に関しては最初から外部リンクを提供することで、同じ轍を踏まないようにしたのではないでしょうか。

クエリ・ファンアウトで幅を広げた質問に回答

query fan-out(クエリ・ファンアウト)」という技術が AI Mode には使われています。
複数のサブトピックと複数のソースにわたって、複数の関連検索を同時に実行する仕組みです。

上のキャプチャで見せた AI Mode は、[what should I prepare for climbing mt. fuji](富士山登山には何を準備したらいいか)とクエリにして回答しています。

富士山に登るための準備にはさまざまな項目が含まれます。
通常のウェブ検索であれば、そうした項目を網羅的に取り上げたコンテンツが優先的に検索結果に表示されるはずです。

しかし、AI Mode は富士山登山に必要な準備を細分化します。
たとえば、次の項目に分けて回答してきました。

  • Gear and Equipment(道具と装備)
  • Food and Hydration(食料と水分補給)
  • Other Essential Items(その他の必需品)
  • Pre-Climb Preparation(登山前の準備)
  • During the Climb(登山中)

それぞれの項目はさらに細分化されます——装備であれば、履物(登山用シューズ/ブーツ)、重ね着できる衣服、ヘッドランプ/懐中電灯、バックパックなど。

各項目に関連するウェブコンテンツへも AI Mode は外部リンクします。
結果として、ウェブ検索であれば上位表示できなかったコンテンツであっても細分化されることで、クリックの機会を得られます。

クエリの細分化と細分化したトピックの検索を実行するクエリ・ファンアウトが関連する複数のソースを探します。
こうすることで、露出の機会が増える可能性があるというのです。

あくまでも、Google 側の理想であって、本当に想定どおりに機能している保証はありません。
とはいえ少なくとも、サイトへのトラフィックを奪わないよう配慮して AI Mode を設計しているというのが Google のスタンスです。