[レベル: 上級]
この記事では、昨日に続いて米ニューヨークで9月に参加したSMX East 2016 カンファレンスのセッションレポートを共有します。
セッションのテーマは、”アイトラッキング”から考察するユーザー行動です。
Mediative社が実施した、検索結果におけるアイトラッキング調査の結果から見えてきた事実を、Chris Pinkerton(クリス・ピンカートン)氏が解説しました。
スマートフォンの普及にともない、検索ユーザーの行動はどのように変化しているのでしょうか?
検索結果のユーザーの視線の動きの変化
2005年
2005年にGolden Triagle(ゴールデン・トライアングル)が発見された。
ユーザーがよく見るエリア、クリックするエリアは三角の形をしている。
[鈴木メモ: 『Above the foldとは』というこのブログの記事でかなり以前にGolden Triagleを紹介したことがあります。]
2016年
現在は違う。
さまざまな要素が検索結果に出るようになった。
2016年の調査では2つの大きな変化が見られた。
- 半分の時間で多くの情報を見るようになった ―― 2.6秒から1.3秒に
- スキャンするパターンが三角から縦の四角へ(図の水色の囲み枠)
重要な発見
- 1回のセッションでユーザーは以前よりも多くの結果を見るようになった。しかし1つ1つを見る時間は短くなっている。
- モバイル検索が、横方向ではなく縦方向にスキャンするようにユーザーの習慣的な状態を変化させた。これは、PCからの検索結果にも影響を与えている ―― 下はPC検索結果のヒートマップ。横ではなく縦に見ている。
- さまざまな要素が現れたが、依然として検索結果1位が最もクリックされる。
モバイルデバイスは検索行動にどのように影響しているか
同じ検索結果でも、PCとモバイルではレイアウトが異なる。
PCとモバイルはスクリーンサイズが違うだけはなく、使うシチュエーションも違う。
モバイルでの重要な発見
- オーガニック検索の1位が見られるのに(スクリーンに表示されるまでに)、PCよりモバイルでは87%長い時間がかかる。
[鈴木メモ: スクリーンエリアが小さく、ナレッジパネルや広告の下にオーガニック結果が出てくることが影響しているためと思われます。] - オーガニック検索結果の4位より下は、モバイルでは4.7%しかクリックされない。対して、PCでは16%。
- ナレッジパネルが検索結果に出てくると、オーガニック検索1位のクリックは約22%減る。
- 93%のユーザーはナレッジパネルを見る。
- 49%のユーザーはナレッジパネルをクリックする。
- 検索結果ページの上位2つのテキスト広告の平均クリック率はモバイルでは19.2%。対して、PCでは14.5%(モバイル検索のほうが、トップに表示される広告が多くクリックされ、オーガニック検索のクリックがその分減る)。
調査から見えたそのほかの重要な発見
ローカルリスティング&地図
- オーガニック結果よりも上に表示された場合、ローカルリスティング/地図のクリックは47%多くなる。
- オーガニック結果よりも上に表示された場合、ローカルリスティング/地図は51%多く見られる。
★評価のリッチスニペット
- モバイルでは、★評価が付いたリッチスニペットの平均CTRは24%
- ★評価が付いた1位のオーガニック結果のCTRは38.7%
広告
- リスティング広告の1位は、平均して0.36秒後に見られる。
- オーガニック結果は、上に広告が3つ表示されていた場合は、1つ表示されていた場合よりもクリックが平均10%減る。
オーガニック検索結果
- オーガニック検索結果1位の平均CTRは33.2%。オーガニック検索結果だけのとき(広告やナレッジパネルが出ていないとき)は、40%。
- 57%のクリックは上位4位。オーガニック検索結果だけのとき(広告やナレッジパネルが出ていないとき)は75%。
まとめ
- 検索結果1位が最もクリックされる。モバイルではPCよりも1位がスクリーンに出てくるまで長い時間がかかる。
- ペイド検索(広告)は、PCに比べてモバイルではより多くのトラフィックを獲得する機会がある。
- モバイルでは3つの広告が上部に表示されることがほとんど。ブランド企業はオーガニック検索からのトラフィックが減少することに備えなければならない。広告に投資したほうがいいかもしれない。
- オーガニック結果の上でも下でも、ローカルリスティングに表示されることは表示やクリックに大きな影響を与える。
- モバイルでは、上に表示される要素によってオーガニック結果の表示やクリックが大幅に減る傾向がいまだかつてないほど強まっている。
以上です。
検索結果では、ユーザーの視線は逆さまの直角三角形のエリアに集中する傾向があることは、知っていた人も多いのではないでしょうか。
ですが、モバイル検索ではこのパターンは当てはまりません。
純粋に縦方向になります。
PCのスクリーンが横長の長方形であるのに対し、スマートフォンのスクリーンは通常は縦長の長方形であることを考えると不思議なことではないのかもしれません。
ところが、スマホにおけるこの行動パターンがPC検索にも影響を与えているというのが僕には驚きでした。
PC検索でも逆直角三角形から縦長長方形へと自然が集まるようになっているというのです。
“習慣”が起因していることは明らかです。
検索結果の1位が、依然として最もクリックされるという結果は驚くことではないでしょう。
しかもモバイル検索においては、PC検索以上に1位の重要性が増しているようです。
4位以下のクリック率が極端に減ることも衝撃的でした。
しかしモバイル検索では、オーガニック検索がスクリーンに出現する前に、ナレッジパネルやローカル結果、そして広告が表示されるケースが多々あります。
たとえ1位を獲得できたとしても、他の要素にじゃまされて見てもらえないケースが増えてきます。
自社に関連性があるクエリで、ナレッジパネルやローカル結果が出ているか確認してみるとよさそうです。
また集客の観点では、モバイル広告への積極的な投資も検討したいところです。
★が付いたリッチスニペットは、PC検索ではユーザーの慣れでクリック率が落ちているような印象を持っています。
でもモバイル検索では影響力まだまだ健在のようです。
レビューを掲載しているサイトは、レビュー/評価の構造化データを必ず実装しましょう。
ほかにもさまざまな新しい発見があったアイトラッキング調査のセッションでした。