[レベル: 初・中・上級]
ユーザー体験を損ねる広告を掲載しているサイトに対して、Chrome ブラウザでは広告を一切表示しなくなるようにすることを Google は発表しました。
これにあわせて、サイトに掲載している広告に問題があるかどうかを調べるツールの提供を始めました。
背景
Google が、こうした決定を今回下した背景の1つに、ユーザー体験を損ねる広告の増加が挙げられます。
いきなり大きな音楽で再生が始まる広告や記事を見る前に強制的に見せつけられる広告のような不愉快な広告は誰しもが体験したことがあるはずです。
広告そのものは悪いものではなく、健全な経済活動です。
広告閲覧者と広告発行者の双方にとってより良いオンライン広告を提供するために Coalition for Better Ads という団体が組織されています。
Coalition for Better Ads は消費者に受け入れられる広告の改善を目指し、Better Ads Standards という広告標準を策定しました。
Better Ads Standards とは言わば、「こういった規則に基づいて広告を掲載しましょうね。そうすればユーザーに嫌な思いをさせることはありませんよ。」という広告の作成・掲載・運用に際しての自主ルールです。
Google は、この Coalition for Better Ads に参画しています。
Better Ads Standards 標準に準拠する広告を掲載するサイトを増やしていき、反対に準拠していない広告を掲載するサイトを減らしていくという狙いが根底にあります。
Chrome が Better Ads Standards をサポート
Better Ads Standards を Chrome でサポートします。
サポートとはどういう意味かというと、Better Ads Standards に準拠していない広告を掲載するサイトを Chrome ユーザーが閲覧した場合には、広告を一切表示しなくなります。
つまり、Ad Blocker(広告ブロック)がブラウザ標準の機能として働きます。
2018年初め頃からの実装を予定しています。
どんな広告なら良くて、どんな広告だと悪いのか?
Better Ads Standards はどんな広告を良い広告とし、どんな広告を悪い広告として定義しているのでしょうか?
PC とモバイルのそれぞれに関して悪い体験をユーザーに与える広告を次のように定義しています。
PC で悪い体験を与える広告
- Pop-up Ads(ポップアップ広告)――ポップアップ広告は、ページのメインコンテンツを見ようとしたときに、その前面に強制的に出現する広告。モバイル検索での評価を下げるインタースティシャル広告もこれに相当します。
- Auto-playing Video Ads with Sound――音声とともに自動再生する動画広告。ページを開くと同時に大きな音を鳴り響かせて驚かせる広告です。
- Prestitial Ads with Countdown(プレスティシャル カウントダウン広告)――これは、「記事に移動するまでにあと◯秒」のように一定の時間広告を見たあとにようやくメインコンテンツを閲覧できるようにする広告です。“Prestitial”(プレスティシャル)は造語のようです。“Inter-stitial”(インター・スティシャル)の Inter(中間)を Pre(事前)に置き換えたっぽいです。
- Large Sticky Ads(大きなスティッキー広告)――ページをスクロールしてもくっついて来るあのウザい広告です。
リンク先では、アニメーションで様子を見ることができます。
英語ページですが、画像なので想像がつくでしょう。
モバイルで悪い体験を与える広告
- Pop-up Ads(ポップアップ広告)―― PC で説明済み
- Prestitial Ads(プレスティシャル広告)―― PC で説明済み
- Ad Density Higher Than 30%――高さがスクリーン(メインコンテンツ)の30%を超えている広告
- Flashing Animated Ads(フラッシュアニメーション広告)――色が“チャカチャカ”切り替わって点滅する広告。フラッシュは Adobe の Flash でなく、「点滅する」の意味です。
- Auto-playing Video Ads with Sound――音声とともに自動再生する動画広告。説明済み
- Postitial Ads with Countdown(ポストスティシャル広告)――プレスティシャル広告とは逆で、広告を消すために「閉じる」をタップしてから数秒待たせた後にメインコンテンツにようやく移動できるようにする広告。Post(ポスト)には「後(あと)」という意味があります。
- Full-screen Scrollover Ad(フルスクリーン スクロールオーバー広告)――ページをスクロールしていくと、メインコンテンツに覆いかぶさるような形で出現する広告で、1ページをまるまる覆い尽くします。僕は見たことがないですが、かなりウザそう。
- Large Sticky Ads―― PC で説明済み
“あるある”広告がそろってますね。(笑)
なお、Google が配信する広告も例外扱いされることはありません。
自分たちは甘く見るということはしません。
Ad Experience Report
Search Console に Ad Experience Report(アド エクスペリエンス レポート)というツールが追加されました。
Ad Experience Report では、サイトの広告が Better Ads Standards に違反していないかどうかを知ることができます。
僕が Search Console に登録しているサイトはどれも審査が完了しておらず「未完了」でした。
審査が完了して問題がある場合は、修正が必要な広告をスクリーンショットと動画で指摘するとのことです。
違反が検出された場合は、問題の広告を修正して再審査をリクエストします。
Ad Experience Report に関していくつか補足しておきます。
PC とモバイル
Ad Experience Report は PC とモバイルを別々にレポートします。
PC 向けサイト で問題が発見された場合は PC 向けサイトの広告が非表示になります。
モバイル向けページには影響しません。
その逆も然りです。
サイト内すべての広告に適用
Better Ads Standards に違反した広告がサイト内に1つでも存在していた場合は、サイトすべての広告が非表示になると思われます。
違反した広告だけではありせん。
ドメインレベルでの適用
ドメインレベルでの適用になります。
www.example.com に違反があったとしたら news.example.com や example.com/finance にも影響します。
Ad Experience Report には「ルートドメイン」としてトップの階層のドメイン名が提示されています。
地域
地域によって、ユーザーの広告への考え方に違いがあるので Ad Standard にも差があります。
そこで2つの地域、リージョン A とリージョン B に分かれています。
A は米国とカナダで、B はヨーロッパです。
基本的には、アクセスが多い方の地域に合わせて審査されます。
ただしどちらも多いサイトでは、A と B の両方に所属することあります。
日本は、A にも B にも含まれていません。
日本がターゲットのサイトは、ずっと未完了のままなのかなとも僕は少し疑っています。
Funding Choices でパブリッシャーを保護
広告を表示できなくなるというのは、広告収入をビジネスモデルにしているパブリッシャーには頭の痛い問題です。
Better Ads Standards に準拠した広告だけを掲載していたとしても、アドブロッカーを使い広告を非表示にするユーザーがたくさんいます。
パブリッシャーを守るために、Funding Choices(ファンディング チョイス)というプログラムを Google は提供しています。
Funding Choices に登録したパブリッシャーは、少額の寄付をユーザーから受け取る代わりに広告を非表示にできます。
つまり、広告収入を得られなくなる代わりとして、寄付してもらうわけです。
ユーザーは、広告なしにしてもらえるけれど、記事を読むのだからタダ読みせずに、寄付という形でお返しするのです。
Funding Choices は、Google Contributor を介して“パス”(許可証)を購入することで利用できます。
今のところ、Funding Choices は北米と英国、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランドで利用できます。
今年後半にはほかの国でも利用できるようにするとのことです。
広告をビジネスモデルにしているニュースサイトやメディアサイトは、ベータ版テストに申請するといいかもしれません。
日本語ページができているので、日本でも利用できるようになるんじゃないかと僕は予想します。
この記事でお伝えすることは以上です。
ユーザーの立場からは、ウザい広告が減るのは良いことですね。
サイト管理者の立場としては、ユーザー体験を損ねない広告がますます重要になってくるということを認識しておきましょう。