[レベル: 上級]
新型コロナウイルスのワクチンに関する情報の精度を向上する目的で、MUM を Google は検索に適用しました。
Google 検索における MUM の初めての使用事例になります。
MUM は、Multitask Unified Model(マルチタスク ユニファイド モデル)の略です。
Google が開発した言語理解のための新しい技術です。
今年の 5 月に Google がオンライン開催した Google I/O 2021 で発表されました。
※ちなみに、”マム” と発音してました。
ワクチン名のバリエーションを MUM は数秒で理解
新型コロナウイルス用のワクチンにはさまざまな呼び方があり、その数は 800 を超えるそうです。
たとえば次のようなワクチン名があります。
- AstraZeneca(アストラゼネカ)
- Moderna(モデルナ)
- Pfizer(ファイザー)
- CoronaVac(コロナバック)
- Sputnik(スプートニク)
またワクチンに関する検索には多くの異なるクエリが使われます。
英語であれば、
- Coronavaccin Pfizer
- mRNA-1273
- CoVaccine
など。
日本語であれば、
- 新型ウイルスワクチン
- mrnaワクチン
- AZD1222
など。
こうした多種多様な名前を理解するには、従来の技術では数百時間を要していました。
ところが MUM の技術を利用したところ、50 の言語で 800 を超えるワクチン名のバリエーションをわずか数秒で識別できたとのことです。
結果として、コロナウイルスのワクチンに関して信頼性のより高い情報を検索で提供できるようになりました。
MUM は言語間で情報を伝達する
今までであれば数週間かかった処理を数秒でこなすことができるようになったのは、MUM が備える “knowledge transfer skills”(知識伝達スキル)によるものです。
知識伝達スキルは、ある言語で習得した情報をそのまま他の言語に伝達できます。
言語ごとに学習し直す必要がありません。
たとえば、日本語と英語を理解できる人は、英語の本で得た情報を(上手下手は別として)日本語で説明できるでしょう。
ポ○トークのような翻訳機器を必要としません。
これは本の内容を理解していて、英語 ⇒ 日本語へと情報を伝達(=変換)できるからです。
MUM も同じです。
ある言語で得た情報を、何かを介すことなく別の言語へと受け渡すことができます。
言語の壁を超えて、コロナワクチンに関する信頼性が高い世界中の情報を探せるようになりました。
MUM は検索精度を向上させる
新型コロナウイルスのワクチン情報の検索に MUM が初めて適用されました。
世界中のユーザーに重要な情報をタイムリーに提供することに MUM は役立ったと Google は評価しています。
小さな、それでも革新的な一歩です。
今後も検索の精度を向上するのに MUM は大きな役割を果たすだろうと期待されます。
新型コロナウイルス ワクチンに関係する検索への MUM の適用に関しては、Google Japan ブログでも日本語記事が出ています。
英語版のオフィシャルブログとほぼ同じタイミングでの記事公開でした。
Google にとってもそれだけ重大な進展だったことの現れでしょう。