[レベル: 中級]
Google マップのスパムにどのように対応しているかを Google は公式ブログで解説しました。
具体的に明かすと逆に悪用されかねないと詳細な説明を避けつつも、マップスパム対策の取り組みの一部を Google は紹介しています。
通常ユーザーとの行動様式の違いを検出
本当のマップユーザーの行動様式との違いを検出してスパム判断に用います。
たとえば、ユーザーは通常、通勤や長距離移動の経路案内、あるいはレストランなどのサービスを探すときにマップを利用します。
また、実際に訪れた場所についてレビューや写真を投稿します。
こうした一般的な行動様式を機械学習によって学びます。
もしこうした行動様式から外れたユーザーがレビューを投稿した場合は偽物の可能性があると判断します。
バンコクのユーザーが突然、メキシコシティのカーディーラーに★1つの評価悪いレビューを投稿したら怪しいと判断するでしょう。
不正と判断したレビューはシステムによって自動で削除されたり、そのユーザーによる今後のレビューは要注意としてマークされたりします。
機械学習を用いて自動に対策すると同時に、コンピュータでは検出できないスパムを防ぐために訓練を積んだ人間のオペレーター/アナリストも監視にあたっています。
詐欺と荒らしへの対処
Google マップで、偽のレビューを投稿したり偽のビジネスプロフィールを作成したりする詐欺的ユーザーや、レビューを荒らすユーザーにも Google は対処しています。
詐欺行為に対しては、基本的には未然に防御します。
偽の評価やレビューを組織的に投稿する “Click Farm”(クリック ファーム)を検出するシステムを構築し、そうした不正な投稿を困難にしています。
また、偽のビジネスプロフィールが作成されるのを防ぐために、オーナー確認のプロセスを強化しました。
強化には、新しい機械学習モデルが使われています。
「荒らし」は、偽のレビューを投稿したり、嫌がらせ目的でメッセージを送信したり、無関係な写真を投稿したりする迷惑ユーザーです。
荒らしを防ぐことは難しいのですが、荒らしが発生しそうな状況やビジネスを事前に察知することで対処します。
たとえば、COVID-19 が流行し始めたときには、中華系オーナーのビジネスに嫌がらせが起きる可能性がありました(新型コロナウイルスの発生源が中国だったため感染するのではないかと恐れた)。
該当するビジネスの監視を強化しました。
ほかにも、米大統領選挙関連で間違った情報が広まらないように、投票所の住所や電話番号の編集を制限しました。
また、学校のように荒らしが起きそうな場所は前もって監視を強めています。
マップスパム対策の成果
ここまで紹介したような対策の他にもさまざまな手段で Google はマップスパムに毎日 24 時間体制で対処しています。
2020 年には次のような成果をあげました。
- 5,500万件のポリシー違反のレビューと 300 万件の偽ビジネスプロフィールをブロックまたは削除――新型コロナによる外出制限/自粛せいもあり、削除対象レビューは 2019 年よりも 2,000 万件減少
- 96 万件以上のレビューと 30 万件以上のビジネスプロフィールをマップユーザーからの報告によって取り下げ――2019 年よりも増えたが、大部分は自動システムによる対応
- ポリシー違反または低品質な 1 億 6,000 万以上の写真と 350 万以上の動画を削除――自動処理の改良によるものが大きい。新たに投稿されたものだけではなく、過去に投稿された写真/動画も対象。スパムユーザーに対しては対策を厳しくし、アカウント削除や、そのユーザーが過去に投稿した写真の全削除も実行することも
- 怪しげな行動やポリシー違反を検出し、61 万以上のアカウントを停止
- 実際には所有していないビジネスのプロフィールを登録しようとする試みを 300 万件却下
ウェブ検索に負けず劣らず、マップでもスパム行為が大きな問題になっています。
Google も対処に必死です。
機械学習も全面的に使って対応し、それなりの成果をあげているようです。
とはいえ、完全に防ぐことは難しくイタチごっこはこれからも続くでしょう(これもウェブスパムと同じですね)。