Googleは本当に小規模・独立系のサイトを手助けしてくれるのか?

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2025 年 3 月 2 0日に米ニューヨークで開催された Search Central Live New York では、小規模サイトや独立系コンテンツ制作者に対する Google の支援が Q&A セッションで取り上げられました。

この記事では、その場での Google による説明に関連したその後の X でのやり取りに基づいて、Google が小規模サイトをどのように評価しているのかを探ります。

背景:発端となったダニー・サリバン氏の発言

Google SearchLiaison として Google 検索とサイト管理者のコミュニケーション活動を担っている Danny Sullivan(ダニー・サリバン)氏は、イベントの Q&A ディスカッションのなかで、独立系サイトを支援するために何ができるか」について質問を受け、次のように発言したとのことです。

  • 我々のシステムは、「大きなブランドだから上位に表示させる」という仕組みではない
  • その分野でブランドとして認識されることは重要であり、検索におけるさまざまなシグナル(他者がサイトに言及したり、サイト名で検索されたりすること)と相関している
  • あなたのサイトがどのようなものか、人々がきちんと理解できるようにしているか?
  • 検索経由でサイトに訪れる人々は、実際にどんなサイトなのか理解できていないことがある。それは読者にとって良いことか?

サイト規模の大小に関係なく、“ブランド” としてユーザーに認知されることが重要だというのです。

独立系サイト・個人サイトのブランド確立は容易ではない

このサリバン氏の発言に対して、「独立系サイトや個人ブログをユーザーは好まないため、Google が検索ページに留まらせることでむしろ恩恵を与えている」という否定的なニュアンスを持っているように聞こえるとの指摘があがりました。

「サイトがどのようなものであるかをユーザーが知らないのはよくない」という言葉は、小規模サイトがその存在を明確に示せていないとも受け取れるからです。
独立系・個人系の小規模サイトが大手サイトのようにブランドを確立するのは容易ではありません。
結局は、すでにブランド認知されている大手サイトが優位になってしまいます。

こうした指摘にサリバン氏は次のように補足します。

私は、ユーザーが検索を通じて初めて訪れたサイトの場合でも、そのサイトがどのようなサイトであるかを理解しやすくすることは大切だと説明した。それは大規模なサイトでも小規模なサイトでも同じことであり、いわば「良い第一印象」を与えることが重要ということだ。

ランキングに直接関係するわけではないが、良い評価に繋がる要素とは一致する可能性があり、多くの競合が存在する中で目立ちたいと思うのであれば当然のことでもある。

要点を箇条書きにするとこうなります。

  • 初めてサイトを訪れたユーザーにとって、そのサイトが何を提供しているかが一目で分かることが重要
  • これはサイトの規模にかかわらず、ブランドとしての第一印象を明確にするため
  • ランキングと直接関連するわけではないが、サイトが目立つためには重要なポイント

Google の方針と実際の取り組み

ただし、Google 側にも問題があることをサリバン氏は認めています。

すでにこれ(ブランド確立)がしっかりできているサイトもあることを話し、同時に、特に小規模な独立系サイトに関しては、Google 自身が改善しなければならない問題も存在することも(イベントのQ&Aのなかで)強調した。つまり、サイト側だけに責任があるわけではない。

Google としては、小規模サイトを正当に評価するための取り組みの一部はすでに実施済みで、今年さらに改善を進める計画です。

さらに、以前から繰り返し述べてきたように、素晴らしい小規模クリエイターや独立系サイトが数多く存在しており、我々がより良くサポートできるようになることを願っていると改めて伝えた。次のような声明を出した時もそうだった。

私たちは今年を通じて、一連の改善を通して、クリエイターのコンテンツがより多く表面化されるよう取り組みを続けています。いくつかの改善はすでに実施され、さらなる改善も今後予定されています。

これは極めて重要なことだ。そして我々は、この約束を実現していかなければならない。

具体性の欠如

しかし一方で、実際に小規模サイトや独立系クリエイターは厳しい競争にさらされています。
ランキングシステムのアップデートの影響を受けやすい状況であることはもちろん、Google が言う「ブランドとして認知される」という要件は、小規模なサイトには容易ではありません。
クリエイターにとってはコンテンツ作成に加えて、「ブランドとしての認知向上」の負担があります。

「分かりやすいサイト作り」が理想なのは理解できても、Google が小規模サイトに具体的に何を求めているのかが曖昧です。

事実、次のような強い口調の批判もサリバン氏に向けられました。

正直に言って、Google 最大の問題は、ダニー、あなた方が一体何を言いたいのか誰にも分からないことだ。非常に曖昧で、まったく具体性や一貫性がない。……あなた方はアルゴリズムを操作するくだらないSEO 対策を心配するあまり、ウェブを良くするための本当の教育を怠っている。これが真実だ。

批判の中で特に指摘されたのが、Google の「ガイダンスが不明確である」という点です。

サリバン氏は率直に次のように回答しています。

我々の既存のドキュメントは主に技術的な側面に集中しているが、コンテンツ関連の課題にもっと焦点を当てた分かりやすいガイダンスを提供できるよう改善したい。以前からそうした必要性を主張してきたし、今回の指摘も改善の根拠として伝えていきたい。

サリバン氏は、自身はドキュメント作成の担当者ではないものの、多くのチームに働きかけて改善を推進しているとも述べました。
また、「Search Relations チームは積極的にドキュメントを作成しているが、業務量が非常に多い」ということを述べ、同チームが怠けているわけではないことも強調しています。

ダニー・サリバン氏の発言は、一部で誤解を生んだものの、真意としては、小規模サイトを批判したものではなくむしろ小規模サイトの認知を改善しようという意欲の現れです。
小規模サイトであっても、ブランド認知に注力すれば大手サイトと対等に渡り合えるとアドバイスしました。

そうはいえど、小規模サイトが直面する実際の課題は単純ではありません。
施策につながる具体性が乏しい点は否めません。

今後、Google が予定している一連の取り組みをどのように実施し、独立系サイトを実際にどのように支援するか、Google が約束を本当に守れるかに引き続き注視しましょう。