[対象: 全員]
6月11〜12日に米シアトルで開催されたSMX Advanced 2014に参加してきました。
この記事では、1日目の最後のセッション「You&A」をレポートします。
「You&A」」は、SMXの主催者代表、Danny Sallivan(ダニー・サリバン)氏と米GoogleのMatt Cutts(マット・カッツ)氏とのQ&Aトークです。
マットが新しい発表をしたり、ダニーがマットに鋭い質問をぶつけたりと、SMX Advancedは定番でもっとも人気があるセッションです。
最前列に陣取って2人のトークを目の前で聴いてきました。
そのときの模様をお伝えします。
マット・カッツに質問中のダニー・サリバン
では行ってみましょう!
You&A at SMX Advanced 2014
Q&Aに先立ってマットからいくつか発表がありました。
重要そうなものを2つ紹介します。
Payday Loan Update 3.0
ペイデイローンアップデート3.0を実施する。
今週後半、早ければ明日にでも展開する。
[鈴木メモ] この発表の翌日に実施しました。
@BtotheMcG it's rolling out now!
— Matt Cutts (@mattcutts) 2014, 6月 12
今、(ペイデイローンアップデート3.0)が展開中だ。
2.0はスパムサイトをターゲットにしていたが、3.0はスパムが多いクエリをターゲットにしている。たとえば、payday loan(即日ローン)やcasino(カジノ)だ。
スパムにもっと幅広く対応できる。
再審査リクエストのメッセージを改善
再審査リクエストを拒否したときは、何が悪いかを伝えるもっと詳しく伝えるようにする。
テキストボックスがある返信用のテンプレートを作り、サイト管理者が問題点を明確にできるように、再審査の担当者が任意で説明を書き込めるようにした。
[鈴木メモ] これまでにも不自然なリンクのサンプルを示すことはありましたが、個別に応じて問題点を説明してくれるようです。
ここからはダニーとマットの一問一答です。
パンダ4とペイデイ3のダブり
ダニー・サリバン (以下、DS): パンダアップデート4.0とペイデイローンアップデート2.0がほぼ同日に実施された。どちらの影響を受けたのかわからず混乱している。
マット・カッツ (以下、MC): 普段にはない状況がインデックスにあり、重なってしまった。
アルゴリズム更新の影響を受けたことの通知
DS: パンダやペイデイのようなアルゴリズム更新の影響を受けたことをウェブマスターツールで通知したらどうか?
MC: もっともな要望だけれど、ツイートとかで知らせている。
パンダ4は完全に新しくなったたのでアナウンスした。
500もアルゴリズムがあるのでどのアルゴリズムによるかを伝えることは難しい。名前が付いていないものもある。パンダやペンギン、ペイデイは与える影響が大きいので知らせている。
[鈴木メモ] アルゴリズムの数を200じゃなくて500と言ってました。
ウェブマスターツールの新機能
(ここで質問とは関係なく、ウェブマスターツールの新しい機能についてマットが言及する。)
MC: Fetch as Googleにレンダリングする機能が付いた。
以下を支援する機能を準備している。
- robots.txt
- サイトの移転
- hreflang
楽しみにしていてほしい。
マットとダニーが来るのを待つ、パンダとペンギン、ハミングバード
ペンギンアップデート
DS: 去年の10月からペンギンアップデートが更新していないが?
MC: パンダアップデートにもっと力を入れたいから、次のペンギンアップデートの更新は未定。
リンクの否認
DS: Search Engine Landにコメントスパムを書き込こんだやつから削除依頼が来て、迷惑している(悪いのはスパムコメントを書き込んだやつで、自分は被害者なのに無用な作業を強いられているということ)。
リンクを否認させればいいじゃないか?
MC: 悩ましい問題だ。スパムは罰しないといけない。ホワイトハットな人たちが馬鹿を見るようであってはならない。リンクの否認だけで手動対策が簡単に解除されたとしたら、フェアじゃない。
検索クエリのデータ保存期間
DS: ウェブマスターツールのキーワードデータの保存期間を1年に伸ばすと以前に言っていたがどうなってるのか?
MC: うん、わかってる。しかし今取り組んでいる最中。
[鈴木メモ] 「セルフドライビングカーは作れるのに、(もっと簡単にできそうな)データの保存はやらないんだ」というダニーからの皮肉に会場が笑います。
リンクビルディング
DS: リンクビルディングは終わったのか?
nofollowを付けなければならないのか?
MC: nofollowリンクはウェブではほんの一部。
リンクには依然として有用性が残されている。
ひとを惹きつける、価値を加えたコンテンツが作らなければならない。
「本物」のふりをするよりも「本物」になる方が簡単だと思う。一晩で本物にはなれないけど、始めることはできる。
[鈴木メモ] ダニーは、リンクの価値がなくなったかどうかではなくリンクを集める行為が役に立たなくなったかどうかを尋ね、その点を明確に伝えたもしたのですが、「良いコンテンツを作りなさい」という方向にマットは話を持っていってしまいました。
被リンクなしのランキング
DS: バックリンクがなかった場合の上位表示の可能性を取り上げた動画について説明してほしい。
MC: リンクなしで評価することは可能だ。クオリティやトピカリティを使える。だが難しいことではある。
[鈴木メモ] 動画の内容についてはWeb担のコラムを参照してください。
マットとダニーの登場シーン
オーサーランク
DS: オーサーランクはどうなっているか? In-depth articles以外にも使っているのか?
MC: 内密なことなので言えない。
オーサーランクは長い視点で見て取り組んでいきたい。
「ダニー・サリバンが、どこかの知られていないフォーラムに投稿したらそれを知りたい」、たとえば僕だったらそう思う。
検索結果に戻るまでの時間とCTR
DS: 検索結果への直帰率をランキング要因にしていないが、戻るまでの時間をランキング要因にしているか? 長く滞在していたら、それはユーザーとのエンゲージメントが十分にできている証拠ではないか?
また検索結果でのCTR(クリック率)を見ているか?
MC: 一般的に言って、オープンにいろんな要因を見ているが、滞在時間を使うことにはとても懐疑的だ。
ノイズが入るし操作されやすい。
将来はわからないが、すべてのクエリに通用しないし懐疑的になる。
今のところCTRも利用していない。悪用される可能性があるからだ。
SSLサイトの優遇
DS: SSLを導入しているサイトの評価を高くするかどうかの件はどうなっているか?
またHTTPとHTTPSの両方でアクセスできる場合、HTTPSの方を優先して検索結果に出すようになっていないか?
MC: 現在はランキング要因にしていない。
SSLサイトの評価を上げるかどうかは内部の課題。何も言えない。
とはいえ、(ランキング要因とは無関係に)サイトのSSL化には大賛成。可能なかぎりセキュアにすべきだ。
HTTPSを使ったページのほうを検索結果で見せるということはない。
会場に向かって話すダニー・サリバン
手動対策の期限切れ
DS: 手動対策が期限切れする状況について教えてほしい。
MC: 手動対策を与えたら、期限が設定される。
長さは違反に対する対策の厳しさによる。たとえば隠しテキストのように、そんなにひどくないのは短い。しかしひどければ2、3年ということもありうる。
Google+
DS: Google+が終わったんだって?
(会場大爆笑)
MC: いやいや、終わってない。(汗
ソーシャルシグナル
DS: +1はランキング要因になっているか?
MC: パーソナライズ検索結果には影響している。
しかし通常検索には使っていない。
Twitterもいいね!も使っていない。ほかのURLと同じように通常どおりクロールするだけ。nofollowが付いていればそれに従う。
リンク否認の取り消し
DS: いったんリンクを否認しても取り消すことはできるか?
MC: できる。そのリンク(再び評価対象にしてほしいリンク)を削除したファイルをアップロードすればいい。
ただし時間がかかる。
乱用しないでほしい。
モバイル
DS: レスポンシブウェブデザインがいいのか?
MC: 僕はレスポンシブウェブデザインがいいと思うけど、どれを採用してもいい。
ところで、モバイルは重要だ。誰が思ってるよりも重要だ。そのことをGoogleはわかってる。
モバイルのことを最優先で考えたほうがいい。
たとえばフォームにはオートコンプリート機能をつけるといい。
[鈴木メモ] オートコンプリートはSEOじゃなくてUXの話ですね。
質問を選んでいるダニー・サリバンと足元に転がるハミングバードw
ページスピード
DS: ページの表示速度はどのくらい重要か?
速いと評価が上がるのか? それとも遅いと評価が下がるのか?
MC: たとえば表示に20秒かかるような、スピードがものすごく遅いと評価が下がる。
速いと上がるということではない。
ネガティブSEO
DS: ネガティブSEOについて聞きたい。
MC: ネガティブSEOのことはわかってる。
防ぐアルゴリズムを作っている。ペイデイローンアップデートにもそういうのを組み込んだ。
将来の検索
DS: 将来の検索について教えてほしい。
MC: 自然言語を理解する能力を向上させている。
(と言って自分のスマホを取り出し、音声での検索をデモンストレーションする。)
“Where is the Space Needle?”
「スペースニードルはどこ?」(スペースニードルはシアトルの観光名所)
“I wanna see its pictures.”
「その写真が見たい」
“Who did build it?”
「建てたのは誰?」
“How tall is it?”
「高さは?」
“Show me some restaruarnt nere there.”
「その近くにあるレストランを見せて」
“How about itallian?”
「イタリアンはどう?」
“Navigete the first one.”
「最初のに(一番目に表示されているお店に)案内して」
(上の質問すべてに、続けざまに、検索結果を表示しつつ音声でもGoogle検索が回答する。)
[鈴木メモ] “Space Needle”という単語は最初に1回使っただけで、そのあとは代名詞の“it”をすべて理解しています。人間相手と変わらない、完全な会話がGoogle検索と成立していました。まさに圧巻。会場は拍手とともに感嘆の声に包まれました。
デスクトップでの自然言語の会話型検索
DS: 今見せたような会話型検索はデスクトップでも利用できるのか?
MC: 同じことができるはずだと思う。
モバイルでの改善を今後も続けていく。デスクトップも同様だ。
JavaScriptリンク
DS: JavaScriptのリンクをGoogleは読めるようになっているが、PageRankも渡すのか?
MC: ほとんどの場合はJavaScriptのリンクを読んでPageRankを渡す。nofollowを認識することもできる。
リンクビルディングサービス
DS: リンクビルディングのサービスを利用するのはどうか?
MC: リンクビルディングはハイリスクのサービス。
ホワイトハットのリンクビルディングは、「素晴らしい」と呼ばれるようになること。だましたり、手っ取り早いやり方でやってはいけない。クエリティビティが必要。
手動の特典
DS: 「Manual Action(手動による対策)」はあるが、「Manual Benefit(手動でランキングを上げること)」はあるのか?
MC: そういうのはない。
アルゴリズムの適用において例外扱いするサイトもない。
たとえば、パンダアップデートにホワイトリストはない。
新しいアルゴリズムを導入するときに、大きな影響を受けないかを監視するサイトのリストを作ることはあるかもしれない。
モバイルに備える
DS: 最後にひと言。
MC: モバイルに対する準備をすること。
誰が想像するよりも速いスピードで起こっている。近いうちにデスクトップを追い抜くと予測している。
シアトルに来るときの機内で、10人がモバイルを使っていたのに対して、ラップトップは3人だった。
ダニーの質問のうち、4、5個は僕が事前にリクエストしたものでした。
聞きたかったことはほぼ聞いてもらえたのですが、採用されなかった質問で、どうしても知りたかったものをマットに直接聞いてきました。
オーソリティになるのは人間かサイトか
僕: 各分野のオーソリティを見つけ出し、評価を上げるアルゴリズムを開発/導入しているというが、オーソリティの対象は人間(例: ダニー・サリバン)なのか、それともサイト(例: Search Engine Land)なのか?
MC: サイト
[鈴木メモ] 人間がオーソリティの対象になるとしたら、それはオーサーランクになりそうなので、納得です。
まずは、自分のジャンルにおけるサイトとしてのオーソリティを僕たちは高めましょう。
以上です。
日本にいる僕たちにとってあまり関係なさそうなものは省いています。
それでもマット・カッツ氏本人の口からじゃないと聞けない情報がたくさんあったはずです。
あなたにとってどれがいちばんインパクトがあったでしょうか?
[おまけ]
マットとダニーが会場にハミングバード(のぬいぐるみ)を投げ入れました。
運良くキャッチできましたが子どもでした(ふっくらしたもっと大きなハミングバードもいた)。
まだ本番デビューするには未熟っぽく見えるので、ハミングバード10くらいでしょうか?w