リンクを無効化する「リンクの否認」ツールをGoogleが公開、よくありそうな13個の疑問に答えてみる from #PubCon Las Vegas 2012

[対象: 上級]

サイトへの不自然なリンクを無効化できる、「リンクの否認」(英語名: Disavow Links)という新しいツールをGoogleが公開しました。

GoogleのMatt Cutts(マット・カッツ)氏がリンク無効化ツールの提供を約束したのは、米シアトルで6月に開催されたSMX Advancedでした。
4ヶ月たって待望の登場となります。

公式アナウンスをはじめあちらこちらで紹介されているのでもうご存知のはずです。

先週参加してきたPubCon Las Vegas 2012では公式アナウンスや公式ドキュメントの公開に先立ってGoogleのMatt Cutts氏がこのツールについてキーノートスピーチで紹介しました。

Matt Cutt at PubCon

そこでこの記事では、公式のソースとMatt Cutts氏のスピーチをもとにリンクの否認ツールの利用に際してよく出てきそうな疑問について解説します。

Googleリンクの否認ツールによくありそうな13個の疑問

Disavow Links

Q1. どんなときに誰が使うの?

使う場面は大きく分けると次の3つのケースです。

  • 不自然なリンクに対する警告を受け、ありとあらゆる努力をしたにもかかわらず問題となっているリンクを取り除けないとき
  • ペンギン・アップデートにより不正なリンクが見つかってしまいそれをどんなに頑張っても削除できないとき
  • 第三者によるスパムリンク攻撃によって明らかに悪影響を受けていると断言できるがどうにも対処のしようがないとき

逆に言えば、これら以外の状況では使う必要はありません。

公式アナウンスやツールの設定中、そしてMatt Cutts氏のビデオで繰り返されるように普通にサイトを運営しているのであれば使う必要はまったくありません。
Matt Cutts氏はPubConのスピーチのなかでもほとんどの人は使わなくていいと何度も強調していました。

使う必要があったとしても、技術的なことに詳しく今自分が何をやっているか完全に理解できる人だけが利用すべきです。
なんとなくで使っていると、予期せぬ重大なトラブルが発生するかもしれません。

公式アナウンスやヘルプ、ツール使用中の説明を見ただけでは設定がわからないとしたら使うレベルに自分は達していないと理解していいでしょう。

僕がツール設定の各ステップをこのブログで解説しないもっとも大きな理由にもなります。
自分1人の力でやれないなら安易に飛びつかないことです。

Q2. リンクを否認すれば再審査リクエストは送らなくていいの?

いいえ、再審査リクエストは依然として送信しなければなりません。

再審査リクエストには「リンクの否認」ツールを使ったことも説明しておくといいでしょう。

ツールを使ったあと、2、3日待ってから再審査リクエストを送ったほうがいいとMatt Cutts氏は言っていました。

待つことに特別な意味があるわけではなく、Googleに確実に届くまで少し余裕を持ちましょうということだと思います。

Q3. ツールを使えば不自然リンクの自力での削除はもう不要?

いいえ、そんなことはありません。

これまでのようにすべての不自然リンクはやはり自力で削除しなければなりません。
やれることをやり尽くした結果として取り除けないリンクをツールで否認してもらいます。

問題となっているリンクがなくなっているかどうかは依然として再審査でチェックされます。

リンクの否認ツールですべての問題が一気に解決すると短絡的に考えていけません。

ここは注意してください。

自作リンクや有料リンクが見つかったらツールを使えばいいやという浅はかな思考でGoogleをだまそうとするのはやめておくほうが身のためです。
再犯を繰り返していると終身刑になるかもしれませんよ。

Matt Cutts is speaking.

Q4. 効果が出るにはどのくらいの時間がかかるの?

数週間かかります。

再クロールと再インデックスしたあとに再処理が必要になります。
すぐに効果を発揮するものではありません。

Q5. 否認リクエストのファイルは複数送信できるの?

送信できるファイルは1サイトにつき1つだけです。

複数の管理者で1つのサイトを管理していたとしても共通で使用されます。
リンクを修正するにはファイルをダウンロードして編集した後再度アップロードします。

Q6. いったん否認したリンクを否認しない状態に戻したいんだけど?

アップロードしたファイルをツールからダウンロードして、そのリストから否認を解除したいURLを削除し、再びアップロードします。

ただし再評価にはより長い時間がかかるかもしれないし以前よりもリンクの評価が下がるかもしれません。

したがってアップロード前には不自然リンクの入念なチェックが必須です。

Q7. コメントは何に使われるの?

コメントはリンクの否認処理には無視されます。
が、コメントに自分がとってきた努力を書くことができます。

場合によっては人間が見たときのアピールになるのかもしれませんね。

なお、日本語は文字化けするかもしれないのでファイルはUTF-8でエンコードしたほうがよさそうです(「UTF-8でエンコード」の意味がわからない人は、冗談抜きでこのツールを使うべきではありません)。

Q8. 否認をリクエストしたURLは必ず無効化されるの? どんなふうに処理されるの?

ツールによってリクエストされた否認をGoogleはヒントとして扱います。
必ず従わなければならない命令としては扱いません。

明らかに使い方を間違えていると認められたり判断に迷ったりしたときの最終決定権はGoogleが持っています。

ただ強い提案 (strong suggestion) とも言っているので通常は受け付けるようにも思います。
rel=”canonical”のような御用がないように細心の注意を払わなければなりません。

使われ方を見ながら間違った利用方法を発見していくのだろうと考えます。

否認されたURLはnofollow属性が付いたリンクのように扱われます。
すなわちリンクとしては評価されなくなり価値がゼロになります。

Disavow links Slides

Q9. URLはいくつまで登録できるの?

URLの本数に上限はありません。
ただしファイルサイズは2MBが上限です。

同じドメインから何本もリンクが張られているとき(たとえばサイドバーやフッターからのROSリンク)は、「domain:」シンタックスを使いましょう。

テキストファイルで2MBを超えるしたら「どれだけの不正リンクが残ってんだ!?」ということになります。
そんなに大量のリンクを本当に外せないのであればそのドメインは捨ててやり直したほうがいいんじゃないかと僕は思います。

Q10. サブドメイン単位でリンクを否認できる?

wordpress.comやblogspot.comのように有名なフリーホストであればたいていのケースではサブドメイン単位でも受け付けられます。

「domain:something.example.com」を指定すれば「something.example.com」サブドメインのリンクだけを否認対象にできます。

新しく登場したばかりのフリーホストやマイナーな無料ブログでは認識されないかもしれません。

Q11. 不正なリンクを探すためのリンク一覧はどうやって入手したらいいの?
我らが辻大先生が次のようにおっしゃっていました。

ようは、Googleウェブマスターツールからすべてのリンクをダウンロードできるとヘルプには書いてあるけれど、あれはすべてじゃないはずだというのです。

はい、それであまりにもしつこい熱心なので聞いてきましたよ、Matt Cutts氏に直接ね。

ほとんど大部分のバックリンクはGoogleウェブマスターツールのレポートに出ているそうです(“vast, vast majority”と言ってました)。

Open Site Explorerなどサードパーティ製ツールに出ているのにGoogleウェブマスターツールに出てこないリンクがあるとしたら、それは質の低いリンクだということでした。
レポートに出すまでもなく完全に無視されているのかもしれませんね。

基本は、Googleウェブマスターツールで入手する最新のリンクレポートをもとにして不正なリンクを探し出すことになるようです。

辻さんが望んでいたような回答ではなかったかもしれませんが、Matt Cutts氏からこれを聞き出すだけでも不正なリンクを撤去するのに匹敵するくらいの努力が必要なのです。

もっと突っ込んで聞きたいことがあれば四の五の言わずにカンファレンスに参加して自分で聞いてください。 > 辻大先生w

さて真面目な話に戻って、間違ってもダウンロードしたリンクをそのままリンクの否認ツールにアップロードしないでください。
サイトに張られているすべてのリンクを無効化することになってしまいます。

誰か間違ってやる人が出てきそうです。

そこまではひどくないにしても、きちんと評価されている正当なリンクまで否認リストに含めてランキングが下がったと騒ぐ人も出てきそうな予感がします。

だから精通した人だけが使うべきなのです。

Matt Cutts sittin on a chair

Q12. で、ぶっちゃけ使った方がいいの、使わない方がいいの?

ここは僕個人の意見です。

使っていいと思います。

使ってはいけないツールをGoogleが公開するはずがありません。

ただし何度も言うように、やるべきこと(リンクの削除)はきちんとやって、ツールの仕組みを100%理解して、そのうえでの最終手段として使いましょう。

もう連絡がつかない過去のSEO業者の尻拭いをさせられているまっとうなSEO関係者が使うぶんにも構わないでしょう。

そうではなくて、ツールの使い方がよく分からない状態やこれさえあればやり直しが効くといった思考では使わないことを推奨します。

効果がどのくらい発揮されるかの情報もまだ出てきていないので、よほど切羽詰まった状況か試験的にやるのでなければしばらく様子を見てもいいのではないかとも思います。

やるにしても自己責任ですね。
他人に対して無責任にツール利用を勧めることもやめておきましょう。

Q13. で、ぶっちゃけ効果あるの? Googleの言ってることは信用できるの?

公開されてまだ1週間そこそこなので効果が出るのかどうかは分かりません。

一般公開の前に外部の人間にベータテスト利用させていたようです。
彼らは不自然リンク警告を受けたサイトで取り除けないリンクをツールを使って否認したところペンギン・アップデート3が実行されたタイミングで順位回復が起こったそうです。
ただしこれがリンクの否認によるものかどうかは確証を得られていません。

ツールを使った方はその後どんな変化があったかあるいは変化がなかったか、ぜひ情報提供してください。

Googleの言っていることを信用できるかどうかに関しては、嘘は言っていないはずです。

ただ期待どおりに作用するかどうかは時間がたってみないとわかりません。
想定どおりのこともあれば想定外のことも起こるでしょう。

多少疑いたくなるのは、ツールによる不正なリンクの提出によってたくさんのデータを集めることが可能になったのではないかということです。
不自然リンク警告への再審査リクエストでもデータを集めていたに違いないのですが、ツールの登場によってさらに簡単に大量のデータを集めることができるようになったはずです。
僕たちを利用したクラウドソーシングとでもいいましょうか。

もっともこれは完全な推測に過ぎませんけどね。

信じるか信じないかは個人の思想によるのでこれで終わりにします。

Matt Cutts at PubCon

さて、新登場したリンクの否認ツールについてよくありそうな疑問、というより利用にあたって知っておくべきことを解説してきました。

最初にも書いたように自分が使う状況にあるかどうかをまず的確に判断します。
そのうえで使うことを決めたのであれば間違いのないように正しく設定して効果が出ることを期待しましょう。