[レベル: 初〜中級]
昨日に続いて、今日もSMX Munich 2016のセッションをレポートします。
今回のレポート記事のセッションテーマはモバイル、スピーカーはState of DigitalのBas van den Beld(バス・ヴァン・デン・ベルド)氏です。
ユーザー視点から見たモバイル対応の重要性についてベルド氏は語りました。
モバイルは、私の人生を変えた
90年台後半、私はインターネット企業で働いていた。当時のウェブサイトは非常にシンプルで、パンフレットをオンラインで公開するだけのものだった。
ある日、上司の命令で携帯を持たせられたが、ゲームをするかテキストメッセージを送るくらいにしか使わなかった。
2000年代前半に状況が大きく変わり、初めてモバイル向けサイトを作った。とはいえ、非常にシンプルなものだった。
2016年に話を進めると、先日家族との夕食時に、GoogleやSiriにスマホで話しかけると音声で返事をしてくる話題になった。子どもたちにとってはこれは当たり前のことだった。その晩、娘に「ねぇパパ、聞きたいことがあるだけど」と言われた。「もちろん。何だい?」と答えると、「パパじゃなくて、Googleに」と言われて、ギョッとした。
こうした出来事は、モバイルと検索に対する今日の考え方が昔とは違っていることを非常によく示している。
どこでもモバイル
モバイルの世界は高速で増加している。スマートフォン利用の70%以上は、情報を入手するためだが、タブレットやデスクトップ、ラップトップも使っている。私たちはどこでもそうしたデバイスを使える。
モバイルは完全に日々の生活の一部になり、それなしでは生きられなくなっている。特に若い世代にとって。
ドイツとフランスのFacebookが行った調査は、モバイルデバイスがどのくらい大きな役割を果たしているかを証明している。
ドイツのマルチデバイスの10代は、所有しているスマートフォンと非常に密接な関係を築いている ―― 自分のことをよく知っていて秘密を隠しておける日記と同じようなものとして考えている。
検索マーケッターはどのように対応すべきか
世界を知るということはこんなふうにとても速いスピードで変化している。この変化に適切に対応していかなければならない。
去年(2015年)のSMX WestでGoogleのGary Illyesは、「4月15日に何かが起きる」と予告した。間もなく、それはモバイルゲドン(モバイルフレンドリーアップデート)だと明らかになった。
検索マーケットはパニックに落ち入った ―― 準備はできているか? モバイルサイトのUXは大丈夫か? 技術的な設定はできているか? サイトはモバイルフレンドリーか? ―― ウェブ中にアドバイスが飛び交った。
本当のモバイルフレンドリーとは
技術的にはモバイルフレンドリーにできるし、モバイルフレンドリーにしなければならない。だが、たいていはここで終わってしまう。モバイルとモバイルフレンドリーには、技術的なこと以外にも大切なことがある。
それは次のようなことだ。
どこにいるのか?
まず、ユーザーがどこにいるのかを理解しなければならない。人々は動き回っている。モバイルというのは端末のことではない。その端末を使っている人間のことだ。マーケッターとして、ユーザーがそのときにどこにいるのかを理解する必要がある。
何をしているのか?
モバイルモバイルフレンドリーでは、そのとき何をしているのかも理解しなければならない。家にいたとして、TVを見ているかもしれないし、仕事をしているかもしれない。娯楽を楽しんでいるかもしれない。やっていそうなさまざまな行動を理解することが役に立つ。そうしたテーマに役に立つコンテンツを作り、必要になったときに提供できるようにしておく。
どうやってデバイスを使うのか?
昔の携帯電話は検索するには使いづらかったし、ウェブ閲覧にはもっと不便だった。今のスマートフォンはもっと簡単になっている。スマートフォンの使い方も変化した。キーボードからタッチスクリーンへ変わったし、音声検索へシフトしている。
Microsoftの統計データによれば、ミレニアルズの70%は音声検索を使っている。その結果として、検索クエリがより長くなっている。
何を目的にデバイスを使っているのか?
私が携帯を持ったときは、テキストメッセージを送るか電話をかけるくらいだった。今でもメッセージを送るが、もっといろんなことができる ―― 音楽を聴いたり、ゲームをしたり、ソーシャルネットワークに写真を投稿したり。
こうしたことを理解すれば、人々の行動を最大限に活用できる ―― たとえば、画像を作るきっかけを作り、InstagramやSnapchatを使わせる。
だがそれ以上に大切なことがある。スマートフォンは徐々にパーソナルアシストになりつつある。FacebookのMやHoundのようなアプリがあるし、GoogleのGoogle NowやMicrosoftのCortanaはもっと先を行っている。
こうしたプロダクトは、求める前に情報を提供してくれる。数年前に、エリック・シュミットが予言したことだ。
その時その場所で人々が何を求めているかを知る
最後に、モバイルフレンドリーでは人々がその時に何を探しているかを理解することも大切だ。たとえば、“near me”(近くの〜)の検索が急増していて、88%がモバイルからであることが調査からわかっている。
ユーザーのニーズを理解し、ユーザーがどこにいて、どんなデバイスをどんなふうに使っているかを理解しなければならない。そうすることで、顧客に対する完璧なユーザー体験を作ることができる。
マーケッターはどのように対応すべきか
変化しているモバイルワールドには次のような対応が求められる。
- ユーザーについて考えることから始める: ユーザーは何を必要として何を使うのか。ユーザーにとって何が機能するのか。自分の商品・サービスのことを最初に考えるのではなく、ユーザーのことを最初に考える。
- リサーチに関して言えば、ユーザーを理解するために本当に努力しなければならない。キーワードリサーチや行動リサーチをする。
- ユーザーを理解するときにはユーザーとの関連性を高める必要がある。ユーザーが必要とするとき、最もユーザーの役に立てるときユーザーにその場にいるようにしておく。
- 役に立つ存在になる。役に立たない存在だとしたら、ユーザーにはブランドとして認められないだろう。ユーザーが必要なときにいつでもいる存在であると同時に、役に立つ存在でなければならない。
以上です。
スマートフォンが生活必需品の1つになりました。
使い方も変わってきています。
単にスマホでウェブを閲覧するだけではなく、まさにいつでもどこでも頼りにできる自分だけのアシスタントになりつつあります。
こうした状況では、スマホでもそれなりにみやすく表示できるサイトをただ単純に提供するだけでは不十分です。
ユーザーが置かれた状況を理解し本当に求めているのは何なのかを知ったうえで、提供する必要があります。
当たり前のことのように聞こえるかもしれませんが、その当たり前のことが本当にできているかどうかをあらためて振り返ってみましょう。