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より多くの検索で AI(人工知能)を Google は利用するようになっています。
特に、人々の安全を守るうえで AI は重要な役割を果たしています。
この記事では、Google が開発した AI の MUM と BERT に関する最新情報を紹介します。
MUM: 生命に関わるクエリの検出精度を上げる
自殺や性的暴行、ドメスティックバイオレンス (DV) など人の命や身体の安全に関わるクエリが検索されたとき、サポート情報を Google は検索結果のトップに表示することがあります。
そのときに本当に必要な、信頼できる手助けを即座に検索結果で提供することが目的です。
ただし、こうしたサポートを必要とするクエリの解釈は必ずしも簡単ではありません。
キャプチャの例のクエリは [how to commit suicide]/[自殺の方法] で、切羽詰っているのが明白です。
しかしながら、切迫した状況が検索クエリにははっきりと現れない場合も少なくありません。
そこで、今後数週間の間に、生命や身体危機に関わるクエリの意図を判断するために MUM が使われるようになります。
クエリには現れない検索意図をより的確に検出することに MUM が力を発揮します。
BERT: 露骨な表現を含む検索結果を防ぐ
ポルノ、暴力、流血などの露骨な表現を含むコンテンツを検索結果に表示させないためにセーフサーチ機能を Google は提供しています。
セーフサーチを無効にしているときでも、ユーザーが望まないような “際どい” 結果を減らすようになっています。
そうは言えど、改善の余地は残されています。
ここで、BERT の出番です。
露骨な表現を含むコンテンツをユーザーが本当に探しているのかどうかを判断するのに BERT が作用します。
予期しない検索結果にユーザーが遭遇してしまうケースを減少させます。
Google によれば、BERT による改善のおかげでユーザーが予期しない検索結果を 2021 年だけで 30% 減らせたとのことです。
民族や性的指向、ジェンダーに関連するコンテンツに特に BERT は効果を発揮するそうです。
検索スパムの排除にも MUM
MUM が誇る特徴の 1 つに、幅広い言語のサポートが挙げられます。
75 の言語を MUM は現在サポートしています。
画期的なのは、1 つの言語で学習すれば、他の言語にも学んだ知識を転送できる点です。
それぞれの言語のトレーニングセットで別個に学習する必要がありません。
検索スパムの排除に AI を Google はすでに利用していますが、今後数週間の間に MUM も使われるようになります。
説明したように、言語依存の壁が低いのが MUM です。
MUM によるスパム防御は世界中の Google 検索に展開していきます。
サポート情報の提供と露骨な表現の排除は、ともすると、英語のクエリだけの適用のような気がしますが、スパム対策に関しては MUM が対応するすべての言語に適用されるようで、僕たちも恩恵に預かれそうです。
なお、MUM と BERT をはじめとする Google が検索で利用している主要な 4 つの AI についてはこちらの記事でも解説しました。