[対象: 中級]
新年あけましておめでとうございます。
2014年もよろしくお願いします。
今年1本目の記事です。
Rap Genius(ラップ・ジーニアス)は、ラップやR&B、ソウルをはじめとしたミュージックの歌詞や歌詞の意味、曲名を提供する人気サイトです。
そのRap Geniusが、ガイドラインに違反するやり方で被リンクを集めたことが原因で手動の対策をGoogleによって与えられました。
Rap Geniusは自分たちの非を素直に謝罪し、問題となるリンクを削除したのち再審査リクエストを送りました。
最終的に、再審査リクエストはGoogleに認められ手動による対策は短期間で解除されました。
2013年末に起こった、メジャーサイトに対してGoogleが制裁を課したお騒がせ事件です。
事の発端はアフィリエイトに名を借りたリンク集め
Rap Geniusは、「アフィリエイトに興味はないか?」という誘い文句を餌にFacebookでの投稿でリンク獲得の協力者を募りました。
まもなく検索数が増えるであろう人気歌手の新曲の歌詞を載せたページへの複数のリンクを記事の終わりに貼るかわりに、その記事をツイートするというのがRap Geniusの提案です。
Rap Geniusは、協力者のブログからのバックリンクを手に入れ、結果として対象ページを上位表示できます。
一方協力者は、大量のフォロワーを抱えたRap Geniusにブログ記事をシェアしてもらうことで爆発的なアクセスを獲得できます。
考えようによっては、お互いにとってメリットがある取り引きです。
裏取り引きが暴露される
ところが、ある人物によってこの裏取り引きが暴露されていまいました。
Rap Geniusが使うように指示してきたリンクのHTMLコードもこの人物は晒しています。
紹介リンクなどではなく、明らかにSEOを意識したランキングを操作するためのリンクです。
Matt Cuttsが調査開始、手動による対策を実施
この画策を知ったMatt Cutts(マット・カッツ)氏は、すぐさま調査を始めます。
@mmasnick @RapGenius we're aware and looking into it.
— Matt Cutts (@mattcutts) 2013, 12月 24
果たして、Rap GeniusはGoogleに手動による対策を与えられるのです。
しかもこともあろうに、警告が届いたのは米国人にとって最も大切な日の1つ、クリスマスのことです。
Rap Geniusが受けた制裁は、「Rap Genius」のサイト名を指名したブランド検索でも圏外に飛んでしまうという厳しいものでした。
行き過ぎたリンクビルディング戦略
Facebookで募ったリンク集めは、Googleの目に留まったきっかけに過ぎません。
Rap Geniousは、まださほど有名でなかったころは、音楽好きのファンに頼んで人気のあるミュージックの特集ページなどを紹介してもらう形でリンクを得ていました。
ところがサイトが有名になるにつれ、ソーシャルメディアでの影響力が増していきます。
ファンはRap Geniousのコンテンツについてブログ記事を書きリンクを張る、かたやRap Geniusはその記事をツイートしたくさんのトラフィックをブログへ送る、こんな、ある意味Win-Winの関係がいつしかできあがっていくのです。
それでもほとんどの場合は、関連性があるトピックのブログ記事の文中にリンクを挿入していました。
しかししだいにエスカレートしていき、リンク元はどんな記事でもよく、記事下にリンクを列挙する不自然な形式に変わっていきます。
今回の事件の発端になったFacebookでのアプローチも同じ手法です。
不自然リンクの除去
手動による対策の警告を受けたRap Geniusは、GoogleウェブマスターツールとOpen Site Expolrerを用いてバックリンクのリストを作成します。
このリンクリストをもとに問題となるリンクを洗い出し、削除、削除しきれないものは否認し不自然なリンクを除去したのち再審査リクエストを送りました。
この再審査リクエストが認められ、手動による対策は解除されたのでした。
誠実な対処と謝罪
Googleに厳しい制裁を受けたRap Geniousは、速やかに対処したのち次のようにGoogleとファンに謝罪しています。
Googleとファンのみなさまへ
こんな愚かなことをやってしまい申し訳なく思っています。関連性がない不自然なリンクの獲得に手を出してしまったことを後悔しています。
今後は、歌詞について知ることができる世界でいちばんのサイトを作り上げることに集中し、検索結果の上位に自然に上がっていくことを期待して待つ所存です。
その他の補足情報
大手サイトがガイドライン違反を犯したリンクプログラムに対して、Googleが手動の対策を与えた事件は過去にも発生しています。
昨年は、アドバトリアルを悪用した英国の大手フラワーショップInterfloraが手動で対策されました。
もっと過去を見ると、米国の大手デパートチェーンJCPennyや米国大手のオンラインリテーラーOverstockへの対策も記憶に新しいところです。
自社サイトである、Google日本のホームページやGoogle ChromeのサイトにすらGoogleが処罰を与えたこともありました。
大手であろうがガイドライン違反には厳格に対処することは一貫していると言えます。
表沙汰には成っていないけれど、日本でも著名サイトに対して不自然リンク警告が送られているとの情報を得ています。
Rap Geniusが、手動対策の解除に要した日数は10日でした。
不自然リンク警告としてはかなり短時間での解除です。
大手サイトだから検索結果に出なくなるのは影響が大きいとみなされて、特別扱いされたわけではないと信じたいところです。
実際、177,781本のバックリンクをRap Geniusは精査しています。
社内に優秀なエンジニアを抱えているらしく、目視と併せて内製したツールも使い問題となるリンクを抽出したようです(今回の出来事を報告した記事でそのツールのプログラムも公開しています)。
削除できないリンクについては否認ツールも使いましたが、リンク削除依頼のメールもブロガーたちに送ったので多大な労力がかかったことは間違いないでしょう。
手動対策の解除後、サイト名での「Rap Genius」ではさすがに1位に出るようになりましたが、すべてのキーワードが元の順位には戻っていないようです。
不正なリンクの力によって上位表示できていたキーワードもあるに違いありません。
評価対象になったリンクが減ったことは、個々のキーワードの検索順位だけでなくサイト全体のオーソリティも下げているかもしれませんね。
今回のRan Geniusの件は、ガイドライン違反、特にリンクの不正操作はリスクが大きいことをあらためて実感させた出来事でした。